バイトを始めた大学生が毎年2月〜3月に悩むのが確定申告です。「バイト代から所得税が引かれているけど、申告しないといけないのか」「そもそも学生でも払うのか」「メルカリで売った分はどう扱うのか」といった疑問が一度に押し寄せます。

結論から言うと、ひとつのバイト先で年末調整を受けていて年収160万円以下(令和7年度税制改正後の本人所得税ゼロ目安)なら、ほとんどの大学生は確定申告は不要です。ただし掛け持ちをしていたり、年の途中で辞めたり、副業で稼いでいたりする場合は話が変わります。逆に、申告すると源泉徴収された所得税が還付されて数万円戻ってくるケースもあります。ここでは大学生が確定申告とどう付き合うか、判断基準と手続きを整理します。

この記事でわかること

  • 確定申告が必要なケースと不要なケースの判定
  • 勤労学生控除27万円の要件と申請方法(令和7年改正後:合計所得85万・給与150万)
  • 年末調整の仕組みと還付を受けられるケース
  • メルカリ・クラウドソーシング収入の扱い
  • 親の扶養控除は給与123万円、19-23歳は特定親族特別控除で150万円まで満額63万円

確定申告が必要なケース

大学生のバイト収入で確定申告が必要になるのは、主に以下のパターンです。ひとつでも当てはまれば申告義務があります。

ケース内容
年末調整されていないバイト先で年末まで働かなかった、短期バイトで源泉徴収だけされた
複数のバイトを掛け持ち主たる給与以外の給与収入と給与・退職以外の所得の合計が年20万円を超える
年収が160万円を超えている令和7年改正後の給与所得控除最低65万円+基礎控除95万円(合計所得132万以下)の枠を超える
副業の所得が20万円超ウェブライター・配達員・動画編集などの事業/雑所得
源泉徴収票が複数あるそれぞれで年末調整が完結していない

ここで言う副業の「20万円」は収入ではなく所得(売上から経費を引いた額)です。クラウドソーシングで30万円稼いでも、PC代や通信費などの経費が15万円あれば所得は15万円で申告不要という判定になります。一方、掛け持ちバイト分の「20万円ルール」は『主たる給与以外の給与の収入金額』と『給与・退職以外の所得』の合計で判定するため、副業所得20万円ルールとは別物です。

なお、住民税は所得税と基準が違います。所得税の申告が不要でも、住民税は20万円以下の副業収入も申告する必要があります。お住まいの市区町村に住民税申告書を提出する形になります。

確定申告が不要なケース

逆に、以下の条件をすべて満たす大学生は確定申告の必要がありません。

  • ひとつのバイト先で年末まで働き、年末調整を受けている
  • バイトの年収が160万円以下(本人所得税の壁)
  • 副業やフリマの所得が年20万円以下
  • 年の途中で退職していない(または退職後に別のバイト先で年末調整を受けた)

多くの大学生はこのパターンに収まります。コンビニや居酒屋、塾講師など、ひとつのバイト先で週2〜3回働いていて年収90万円程度なら、申告は不要です。源泉徴収票はバイト先から12月〜1月にもらえますが、提出先はなく、自分で保管するだけで済みます。

ただし「不要」と「しない方がいい」は別です。年の途中で辞めた、学業で夏休みにガッツリ働いて源泉徴収された、といったケースでは、申告すると税金が戻ってきます。これは後述します。

勤労学生控除27万円の仕組み

働いている学生には「勤労学生控除」という仕組みがあります。令和7年度税制改正後の要件を満たすと、所得税27万円・住民税26万円の控除が追加される制度で、使えばバイト年収150万円まで本人の所得税がかかりません。

要件は3つです。

要件内容
合計所得金額85万円以下(給与収入のみなら150万円以下)
給与以外の所得10万円以下
学校の種類学校教育法に定める学校の学生・生徒(大学・高専・専門学校の一部)

勤労学生控除を使いたい場合の申請方法は2通りあります。ひとつはバイト先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出するときに勤労学生の欄にチェックを入れる方法、もうひとつは自分で確定申告する方法です。バイトを始めた初回に記入するだけで翌年以降も自動的に反映されます。

専門学校の学生は学校の指定状況によって勤労学生に該当しない場合があります。該当するかは学校の学生課または国税庁のサイトで確認できます。大学生と短大生はほぼ全員が対象です。

注意したいのは、勤労学生控除を使うと自分の税金は減りますが、親の扶養控除の判定には関係ないという点です。19歳以上23歳未満の場合、親の扶養控除(63万円満額)が使える給与上限は123万円〜150万円(特定親族特別控除を含む)で、勤労学生控除を使ってもこの判定基準は変わりません。後述します。

年末調整の仕組み

バイト代から毎月引かれている所得税は、「仮払い」の性格を持ちます。年間いくら稼いだか確定していない段階で概算を徴収し、12月に精算するのが年末調整です。

精算のときにバイト先が以下の計算をしてくれます。

  • 1年間の給与合計を確定する
  • 給与所得控除(最低65万円)、基礎控除(合計所得132万以下で95万円)を引く
  • 勤労学生控除・社会保険料控除などがあれば引く
  • 残った課税所得に税率をかけて正確な所得税額を算出する
  • 毎月引かれた源泉徴収額との差額を精算する

令和7年度税制改正で給与所得控除の最低額が55万円から65万円、基礎控除が48万円から95万円(合計所得132万円以下)に引き上げられ、給与年収160万円までは本人の所得税が0円になります。多くの大学生はこの枠内に収まるため、源泉徴収で引かれた分がそのまま戻ってくる計算になります。12月の給与明細に「年末調整還付金」として数千円〜2万円ほど上乗せされているのを見たことがある人も多いはずです。

年末調整を受けるには、バイトを始めたときに「給与所得者の扶養控除等申告書」をバイト先に提出している必要があります。掛け持ちしている場合、この書類はメインの1か所にしか出せません。サブのバイト先では源泉徴収税率が高くなり、差額は確定申告で取り戻すことになります。

還付を受けられるケース

確定申告が義務ではなくても、申告すると税金が戻ってくるケースがあります。大学生に特に多いのは以下のパターンです。

パターン内容還付額の目安
年の途中で退職夏休みだけ短期バイトで源泉徴収されたまま退職数千〜2万円
複数バイトで源泉徴収過多サブのバイト先で高めの税率で引かれた数千〜1万円
医療費控除自己負担10万円超(総所得200万円未満なら総所得の5%超)の治療費・通院費数千〜数万円
寄付金控除ふるさと納税(原則『寄附額-2,000円』を所得税・住民税で控除)・認定NPO等寄付額-2,000円
勤労学生控除の申告漏れバイト先に申告し忘れて源泉徴収されたまま年間1〜3万円

特に多いのが短期バイトのケースです。イベントスタッフや年末年始の郵便局バイトなど、数週間〜1か月で終わる仕事では年末調整ができず、引かれた所得税がそのまま残ります。源泉徴収票だけ渡されて終わり、というパターンです。この源泉徴収票を持って確定申告すれば、引かれた所得税が全額戻ってくることが多くあります。

留学や病気で年の途中から働けなくなったケースも同じです。年収が160万円を下回れば本人の所得税は本来0円のため、源泉徴収されていた分は全額還付対象になります。

還付申告は確定申告の期限(3月15日)に縛られません。翌年1月1日から5年以内であればいつでも申告できます。慌てて3月までに出さなくても、春休みや夏休みにゆっくり準備すれば間に合います。

申告期間と申告方法

確定申告の期間は毎年2月16日〜3月15日です。この期間は前年(1月1日〜12月31日)分の所得を申告します。なお2025年分の申告期限は2026年3月15日が日曜日にあたるため、令和7年分は2026年3月16日(月)まで延長されます。

申告方法は3つあります。

方法特徴必要なもの
e-Tax(電子申告)自宅で完結、還付が早い(2〜3週間)マイナンバーカード、対応スマホまたはICカードリーダー
税務署窓口職員に相談しながら作成本人確認書類、源泉徴収票、マイナンバー
郵送申告書を印刷して税務署宛に送付印刷環境、切手

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」というウェブサービスを使うと、画面の案内に従って数字を入力するだけで申告書が作れます。最後にe-Taxで送信するか、印刷して郵送するかを選べます。マイナンバーカードがあれば完全に自宅で終わるため、多くの大学生はこの方法を選んでいます。

税務署の窓口は2月下旬〜3月は非常に混雑します。相談しながら作りたい場合は、2月16日前後の午前中に行くと比較的空いています。学生証を持って行けば学生向けに丁寧に教えてくれます。

必要書類

申告に必要な書類は以下のとおりです。

  • 源泉徴収票: すべてのバイト先から1月末までに発行される。複数ある場合は全部集める
  • マイナンバーカード(または記載事項が現状と一致する通知カード+本人確認書類、または番号付き住民票の写し)
  • 銀行口座情報: 還付金の振込先(本人名義の普通口座)
  • 医療費の領収書: 医療費控除を申告する場合
  • 寄付金の受領証明書: ふるさと納税などを申告する場合

税務関係書類の押印は令和3年4月1日以降は原則不要です。窓口で提出する場合も印鑑は持参しなくて問題ありません。

源泉徴収票を紛失した場合、バイト先に再発行を依頼できます。退職したバイト先でも発行義務があるため、遠慮せず連絡すれば対応してもらえます。

メルカリ・クラウドソーシングの収入

近年増えているのが、バイト以外の収入源です。扱いを整理します。

メルカリ・ラクマなどのフリマで不要品を売った収入は、生活用動産の売却として非課税です。着なくなった服、使わなくなった教科書、古いゲーム機などは、いくら売っても申告は不要です。ただし1点30万円を超える宝石・美術品や、転売目的で仕入れた商品を売った場合は事業所得または雑所得として申告が必要になります。

クラウドワークス・ランサーズなどでライター・動画編集・デザインの仕事を受けた収入は雑所得または事業所得です。バイトの給与と合算せずに別枠で計算します。

所得区分対象計算方法
給与所得バイト代年収 − 給与所得控除(最低65万円・令和7年改正)
雑所得副業の原稿料・ライター収入など収入 − 必要経費
事業所得独立した事業として継続している場合収入 − 必要経費(青色申告で特別控除可)

副業の所得(収入から経費を引いた額)が年20万円を超えると確定申告が必要です。経費にはPC代・通信費・書籍代・取材交通費などが含まれます。クラウドソーシングの支払い明細と、経費の領収書は1年分まとめて保管しておきます。

YouTube・ブログ・note・TikTokなどの広告収入・投げ銭も雑所得です。Google AdSense、Amazonアソシエイト、noteの有料記事、スパチャ、これらすべてが対象で、年20万円超で申告義務が発生します。

令和7年改正後の壁と親への影響

令和7年度税制改正で扶養控除の所得要件と本人の所得税の壁が変わりました。19歳以上23歳未満の大学生に効いてくる主な壁は以下です。

  • 123万円: 親の所得税の扶養控除(特定扶養親族63万円)が満額使える上限。給与123万円超は次の特定親族特別控除に移る
  • 123万円超〜150万円: 19-23歳の特定親族特別控除(令和7年改正で創設)で、満額63万円の控除を維持。150万円超〜188万円で段階的に控除額が減少
  • 150万円: 19歳以上23歳未満の社会保険被扶養者の年収上限(2025年10月1日〜、日本年金機構の新基準)。これを超えると親の健康保険の扶養から外れる
  • 150万円: 勤労学生控除が使えなくなる(本人の合計所得85万円超)
  • 160万円: 本人の所得税が発生し始める(給与所得控除最低65万円+基礎控除95万円の枠を超える)
  • 国民年金の学生納付特例: 前年所得が『128万円+扶養親族等×38万円+社会保険料控除等』以下なら使える。多くの学生はバイトだけならクリアできる水準

自分の税金だけを考えるなら本人の所得税は160万円まで非課税、勤労学生控除を含めれば150万円まで本人非課税ですが、家計全体で見ると給与123万円を超えると親の扶養控除区分が変わります。19-23歳は特定親族特別控除で150万円までは満額63万円の控除が維持されるため、改正前のような『103万円超えで親の税負担が一気に増える』状況は緩和されていますが、150万円を超え始めると段階的に控除が縮小していきます。

親と相談せずに稼ぎすぎてしまうと、翌年の親の確定申告で扶養関連の控除額に影響が出て揉めるケースもあります。年収120万円を超えそうになったら、一度親に確認しておくのが無難です。特に2か所以上のバイトを掛け持ちしている場合は、合算すると簡単に123万円を超えるため注意が必要です。

手続きのタイミングまとめ

バイトと確定申告まわりで発生する手続きを時系列で整理します。

  • バイト開始時: 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出。勤労学生控除の欄にチェック
  • 毎月: 給与から源泉徴収される(年収見込みによっては0円のことも)
  • 11〜12月: 年末調整書類をバイト先に提出
  • 1月末まで: バイト先から源泉徴収票を受け取る
  • 2月16日〜3月15日: 必要な人は確定申告
  • 申告後: e-Taxなら2〜3週間、郵送なら1〜1.5か月で還付金が指定口座に振り込まれる

還付目的なら5年以内いつでも申告できますが、対象年の書類がそろっているうちにやるのが一番ラクです。源泉徴収票をなくしてから再発行を依頼するのも一手間かかるため、受け取ったらクリアファイルに保管しておくと後で困りません。


数値の参照元

  • 確定申告が必要な人・不要な人の判定: 国税庁No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」(2026年5月閲覧)
  • 勤労学生控除(所得税27万円・住民税26万円・令和7年改正後の所得要件85万円以下/給与150万円以下): 国税庁「勤労学生控除」Q&A PDF・国税庁作成コーナーFAQ(2026年5月閲覧)
  • 給与所得控除最低65万円・基礎控除95万円(合計所得132万円以下)・本人所得税ゼロ目安160万円: 国税庁「令和7年度税制改正」関連資料(2026年5月閲覧)
  • 扶養控除63万円(特定扶養親族19-23歳・給与123万円以下)・特定親族特別控除(123万超〜188万・150万まで満額63万): 国税庁No.1180/No.1177(2026年5月閲覧)
  • 19-23歳の社会保険被扶養者年収150万円未満(2025年10月1日〜): 日本年金機構(2026年5月閲覧)
  • 国民年金学生納付特例の所得基準(128万+扶養親族等×38万+社保控除等以下): 日本年金機構(2026年5月閲覧)
  • 確定申告期間・令和7年分は2026年3月16日(月)まで延長: 国税庁(2026年5月閲覧)
  • 税務関係書類の押印不要(令和3年4月1日〜): 国税庁「税務署窓口における押印の見直しについて」
  • 医療費控除の足切り(自己負担10万円または総所得200万円未満は総所得の5%): 国税庁No.1120
  • ふるさと納税の控除額(寄附額-2,000円): 国税庁No.1155
  • フリマ売却の非課税扱い(生活用動産)・例外(1点30万円超の宝石・美術品等): 国税庁No.1906/No.3105
  • 掲載数値は参考値です。実際の税額・要件は年度や個別の状況によって異なります

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