20歳になると、日本年金機構から「基礎年金番号通知書」「国民年金加入のお知らせ」「納付書」「学生納付特例制度の申請書」などが入った封筒が届きます(原則として20歳到達からおおむね2週間以内に届く運用)。学費と生活費でいっぱいいっぱいの大学生に、さらに月1万7千円以上の保険料を払う余裕はありません。このために用意されているのが学生納付特例制度です。申請すれば在学中の保険料を猶予してもらえて、未納にならずに済みます。
ただし「猶予」であって「免除」ではないため、将来の受給額との関係や、追納した場合の扱い、親が代わりに払う選択肢などを知っておくと判断しやすくなります。ここでは大学生が国民年金とどう付き合うべきか、制度の使い方を整理します。
この記事でわかること
- 国民年金の加入義務と保険料(令和8年度 月額17,920円・2025年度17,510円)
- 学生納付特例制度の所得要件(前年所得128万+扶養親族等×38万+社会保険料控除等以下)・申請方法
- 親が代わりに払う場合の税メリット
- 追納制度(承認月の前10年以内)と将来の受給額への影響
- 未納で放置した場合のリスク
20歳になると国民年金への加入義務が発生する
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、全員が国民年金に加入することになっています。会社員や公務員は厚生年金を通じて自動的に加入しますが、学生やフリーターは「第1号被保険者」として自分で保険料を納める立場になります。保険料は毎年4月に見直され、令和7年度(2025年4月-2026年3月)は月額17,510円、令和8年度(2026年4月-2027年3月)は月額17,920円です。
20歳になっておおむね2週間以内に、日本年金機構から「基礎年金番号通知書」「国民年金加入のお知らせ」「納付書」「学生納付特例の申請書」等の案内一式が郵送されてきます。手続きをしないで放置しても自動的に加入扱いになるため、「届出をしなければ払わなくていい」という話ではありません。納付書が送られてくるのに払わないと未納期間としてカウントされてしまいます。
住民票を大学のある街に移している場合、案内書類は新住所に届きます。住民票を実家に残したままだと実家に届くため、親から「年金の書類が来てるよ」と連絡を受ける流れになります。どちらにせよ、書類を受け取ったら中身を確認して対応を決める必要があります。
学生納付特例制度の仕組み
学生納付特例制度は、在学中の国民年金保険料を将来に猶予してもらえる制度です。申請が通れば、在学中の保険料を納付する必要がなくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 大学・短大・専門学校・高等専門学校などに在学中の学生 |
| 所得要件 | 前年所得が『128万円+扶養親族等×38万円+社会保険料控除等』以下(本人のみ判定。親の所得は問われない) |
| 期間 | 4月〜翌3月の1年度単位(毎年申請が必要) |
| 効果 | 在学中の保険料納付が猶予される |
所得要件が「本人のみ」で判定されるのがポイントです。親の年収がいくらあっても学生本人には影響しません。学生本人の前年所得が128万円以下なら原則として通ります。給与収入だけの場合、年収194万円程度までは給与所得控除により所得が128万円以下に収まるため、多くの大学生は該当します。
ここで注意したいのは、学生納付特例はあくまで「猶予」であって「免除」ではないという点です。申請した期間の保険料は払わなくてよくなりますが、そのままだと将来の年金額には反映されません。追納するか、そのまま受給資格期間としてカウントだけするかは、後から選べます。
申請方法
学生納付特例の申請は、以下のいずれかの窓口でできます。
| 窓口 | 特徴 |
|---|---|
| 市区町村役場の国民年金窓口 | 住民票のある自治体。対面で相談できる |
| 年金事務所 | 全国312か所。住所地を管轄する事務所で受付 |
| マイナポータル(電子申請) | マイナンバーカードがあれば自宅で完結 |
| 在学中の学校(学生納付特例事務法人指定校) | 大学が代行窓口になっている場合あり |
申請に必要な書類は、基本的に以下のとおりです。
- 国民年金手帳または基礎年金番号通知書(20歳で加入時に送られてくる)
- 学生証のコピーまたは在学証明書
- マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
- 申請書(窓口でもらえる。日本年金機構のサイトからもダウンロード可)
マイナポータルから電子申請する場合、マイナンバーカードと対応スマートフォンがあれば窓口に行かずに済みます。通常は学生証画像または在学証明書画像をアップロードしますが、継続申請でマイナポータルとねんきんネットが連携済みなど一定条件を満たす場合は学生証画像なしで申請できる仕組みもあります(対象は順次拡大)。
申請期間の区切りは4月〜翌3月です。年度をまたぐと改めて申請が必要になるため、毎年4月以降に前年度と同じ手続きをします。継続用のハガキが年度末に郵送されてくる大学もあり、そちらで手続きすると初年度より簡単です。
親が代わりに払う選択肢
学生本人の代わりに、親が国民年金保険料を払う選択もできます。これには税制上のメリットがあります。
親が子の国民年金保険料を納めた場合、その全額が親の「社会保険料控除」として所得控除の対象になります。年間で約21万円の控除が増える計算です。親の所得税の税率が20%なら年間4万円強、住民税と合わせれば6万円前後の税軽減になります。
学生納付特例で猶予して、将来本人が追納するよりも、親が今払ってしまったほうが家計全体で見ると得になるケースが多いです。特に親の所得税率が高い(年収800万円以上など)家庭では、社会保険料控除の節税額が大きくなります。
ただし、親に経済的余裕がなかったり、将来子が追納できる見込みがあるなら、無理して親が払う必要はありません。追納期限までに本人の就職後に払えば、本人側の所得控除になります。どちらが家計に有利かは、親の年収と本人の将来所得の見通し次第です。
なお、親が払ったかどうかは納付記録として残ります。確定申告や年末調整で社会保険料控除として申告するときは、納付した本人(親)が申告します。
追納制度と将来の受給額
学生納付特例で猶予された保険料は、10年以内なら後から納付できます。これを追納と呼びます。
追納するメリットは、将来の老齢基礎年金の受給額が増えることです。学生納付特例のまま未追納だと、その期間は受給資格期間にはカウントされるものの、受給額の計算には反映されません。20歳到達後から大学卒業まで例えば24か月分を特例のまま放置した場合、令和8年度の老齢基礎年金満額(年847,300円)から計算して、年間で約4万2千円分(=847,300円×24/480)、月3,500円ほど将来の受給額が下がる計算になります。猶予期間が長くなるほど影響額も比例して大きくなります。
追納した場合、納めた本人の社会保険料控除になるため、その年の所得税・住民税が軽減されます。就職して収入が安定してから追納すれば、税率の高いタイミングで控除を受けられてお得です。
| 選択肢 | 払うタイミング | 節税するのは誰 | 受給額への影響 |
|---|---|---|---|
| 学生納付特例のみ(追納なし) | 払わない | — | 将来の受給額が下がる |
| 親が払う | 在学中 | 親の所得税・住民税 | 受給額は満額に |
| 本人が就職後に追納 | 10年以内 | 本人の所得税・住民税 | 受給額は満額に |
| 本人が学生中に払う | 在学中 | 本人または親 | 受給額は満額に |
追納できる期間は、追納が承認された月の前10年以内です。20歳到達月の納付分は30歳ごろから順次期限が切れていくため、就職後に一括追納するつもりなら、最古の月から優先して払う計算になります。ただし3年度目以降は経過年数に応じて加算額が上乗せされるため、早めに追納するほど払う金額は少なくなります。
未納で放置した場合のリスク
20歳になっても学生納付特例の申請をせず、納付書も放置してしまうと、その期間は未納扱いになります。未納は学生納付特例とは扱いが違うため、注意が必要です。
学生納付特例であれば、将来の老齢基礎年金を受け取るための「受給資格期間」には算入されます。10年以上の納付+特例+免除期間があれば、老齢年金は受け取れる仕組みです。一方、未納は受給資格期間にすら入らないため、将来年金を受け取れなくなるリスクがあります。
さらに深刻なのが障害年金と遺族年金です。大学在学中に事故や病気で障害が残ったり死亡したりした場合、これらの年金を受け取るには「保険料納付要件」を満たしている必要があります。学生納付特例中は納付済み扱いとして要件を満たしますが、未納期間が多いと障害年金が支給されません。
大学生の年代は自動車事故やスポーツでの事故など、思わぬリスクにさらされる時期です。「どうせ払えないから放置」ではなく、最低限学生納付特例の申請だけは済ませておくのが現実的な選択になります。
勤労学生控除とバイト収入の関係
国民年金と直接関係はないものの、大学生のバイト収入を考えるときに知っておきたいのが「勤労学生控除」です。
勤労学生控除は、働いている学生の所得税・住民税を軽減する仕組みです。要件を満たすと所得税27万円・住民税26万円の控除が追加されます。バイトをする学生にとっては、自分の税金を減らす手段として使えます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 合計所得金額 | 85万円以下(給与収入のみなら150万円以下・令和7年改正) |
| 給与以外の所得 | 10万円以下 |
| 学校の種類 | 学校教育法に定める学校の学生・生徒 |
注意点として、勤労学生控除を使うと本人の税金は減りますが、親の扶養関係の控除区分は別の判定基準で決まります。
令和7年度税制改正後、19歳以上23歳未満の大学生のバイト収入で意識する「壁」は以下のとおりです。
- 123万円: 親の所得税の扶養控除(特定扶養親族63万円)が満額使える上限。給与123万円超は次の特定親族特別控除に移る
- 123万円超〜150万円: 19-23歳の特定親族特別控除(令和7年改正で創設)で満額63万円の控除を維持。150万円超〜188万円で段階的に控除額が減少
- 150万円: 19歳以上23歳未満の社会保険被扶養者の年収上限(2025年10月1日〜、日本年金機構)。これを超えると親の健康保険の扶養から外れる
- 150万円: 勤労学生控除が使えなくなる
- 160万円: 本人の所得税が発生し始める(給与所得控除最低65万円+基礎控除95万円の枠を超える)
- 学生納付特例の所得基準: 前年所得128万円+扶養親族等×38万円+社会保険料控除等以下
特定親族特別控除の創設で、19-23歳の大学生は給与150万円までは親の扶養控除区分を維持できる仕組みになっています。とはいえ150万円を超え始めると控除が段階的に縮小していくため、家計全体で見て調整するなら年収123万〜150万円のラインを意識します。年末近くになると「シフトを入れすぎて壁を超えそう」という相談が毎年出るのは、この区分が関係しています。
手続きのタイミングまとめ
20歳前後の国民年金まわりでやることを時系列で整理します。
- 20歳到達からおおむね2週間以内: 日本年金機構から基礎年金番号通知書・加入のお知らせ・納付書・学生納付特例申請書が郵送される
- 加入案内が届いたらすぐ: 学生納付特例の申請書を提出(市区町村役場・年金事務所・マイナポータル)
- 翌年4月以降: 新年度の継続申請(ハガキまたは電子申請)
- 大学在学中: 毎年度申請を続ける
- 卒業後: 就職したら厚生年金に切り替わる。フリーターなら国民年金の通常納付
- 卒業後10年以内: 追納するかどうかを判断する
申請書類が届いてから放置する期間が長いほど、未納期間として記録が残ります。書類が届いたら2週間以内に動くのを目安にするとよいでしょう。
数値の参照元
- 国民年金保険料(令和8年度月額17,920円・令和7年度月額17,510円): 日本年金機構「国民年金保険料」(2026年5月閲覧)
- 学生納付特例制度の所得要件(128万+扶養親族等×38万+社保控除等以下)・申請方法: 日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」(2026年5月閲覧)
- 追納制度(承認月の前10年以内): 日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(2026年5月閲覧)
- 障害年金・遺族年金の保険料納付要件: 厚生労働省「年金制度の仕組み」および日本年金機構の案内(2026年5月閲覧)
- 勤労学生控除(令和7年改正後の所得要件85万円以下/給与150万円以下): 国税庁No.1175・国税庁Q&A PDF(2026年5月閲覧)
- 扶養控除(給与123万円以下)・特定親族特別控除(19-23歳・123万超〜188万・150万まで満額63万): 国税庁No.1180/No.1177・国税庁「令和7年度税制改正」関連資料(2026年5月閲覧)
- 19-23歳の社会保険被扶養者年収150万円未満(2025年10月1日〜): 日本年金機構(2026年5月閲覧)
- 老齢基礎年金の満額受給額(令和8年度年847,300円): 日本年金機構「令和8年度老齢年金ガイド」(2026年5月閲覧)
- 年金事務所312か所: 日本年金機構公式(2026年5月閲覧)
- 親が支払う場合の社会保険料控除: 国税庁No.1130(2026年5月閲覧)
- 掲載数値は参考値です。実際の保険料額・税額・要件は年度や個別の状況によって異なります