引越し当日に部屋の鍵を受け取り、荷物を運び入れて、さあシャワーを浴びようとしたらお湯が出ない。ガスの開栓予約をしていなかったから、蛇口からは水しか出てこない。電気はブレーカーを上げれば点くのに、ガスだけは自分で開けられない。3月末の引越しラッシュでは、ガス会社への開栓予約が1週間待ちになることもあります。

電気とガスは「同じライフライン」と括られがちですが、契約の仕組みも開通のタイミングもまるで違います。この記事では、一人暮らしを始める大学生が入居前にやっておくべき電気・ガスの手続きと、入居後に毎月どのくらいかかるかを整理しました。

この記事でわかること

  • 電気はWebで即日申し込み可能、ガスは立会い予約が必要
  • ガス開栓の予約は入居1〜2週間前に済ませる
  • 1Kの電気代は月3,500〜6,000円、ガス代は月2,000〜3,500円が目安
  • プロパンガスの物件はガス代が都市ガスの1.5〜2倍になる
  • 電気とガスのセット契約で年間1,000〜3,000円ほど安くなる

電気の契約 — Webで完結、入居当日から使える

電気の契約は、引越しのライフライン手続きの中で最もシンプルです。

東京電力エナジーパートナーの「スタンダードS」が東京エリアのデフォルトプラン。不動産会社から鍵を受け取るときに「電気の契約はお済みですか」と聞かれることがありますが、入居前に自分でWebから申し込めます。東京電力のサイトで供給地点特定番号(不動産会社からもらう書類に記載)と使用開始日を入力するだけ。手続きは10分もかかりません。

現在の賃貸物件はスマートメーターが設置されていることがほとんどで、電力会社が遠隔で通電してくれます。入居当日、分電盤のブレーカーを上げればすぐに照明もコンセントも使える。立会いは不要です。

申し込みのタイミングは入居の1〜2週間前が目安。前日でも対応してもらえることが多いものの、繁忙期(3月下旬)はWebの申し込みが集中して処理が遅れるケースがあるため、余裕を持っておいた方が安心です。

電力会社は東京電力のままでいいのか

結論から言えば、最初は東京電力の「スタンダードS」で問題ありません。引越し直後にやることは山ほどあるので、電力会社の比較検討は入居してから最初の請求書が届いた後で十分です。

ただ、「最初から安くしたい」という人には選択肢があります。CDエナジーダイレクトの「シングルでんき」は一人暮らし向けに設計されたプランで、電気使用量が少ない世帯だと東京電力より月100〜200円ほど安くなる。ENEOSでんきも基本料金は東京電力と同じながら、従量料金がわずかに低い設定です。

年間で1,000〜3,000円の差をどう見るかは人によります。ただ、切り替え手続きはWebで完結し、工事も不要。月の途中で切り替えても日割り計算されるので、入居後に「もう少し安くできないか」と感じたタイミングで動いても遅くはありません。

ガスの契約 — 立会い予約を忘れると入居初日に詰む

ガスは電気と違い、入居者またはその代理人の立会いが必要です。ガス会社の作業員が部屋を訪問し、ガスメーターの開栓作業を行います。この立会いなしにはガスが使えません。

東京ガスの場合、Webまたは電話で使用開始の申し込みをします。訪問日時は9:00〜12:00、13:00〜15:00、15:00〜17:00、17:00〜19:00(17時以降は月〜土のみ)の時間帯から選べます。土日祝日も対応していますが、3月末〜4月上旬は予約が埋まりやすい。

東京ガスの公式サイトでは「原則として作業日前日までにお申し込みください」とされていますが、3月末の繁忙期はそうもいきません。入居日の1〜2週間前に予約しておくのが現実的です。1週間前に電話したら「最短で5日後です」と言われた、という話は毎年繰り返されています。

開栓作業では何をするのか

作業員がガスメーターのバルブを開け、室内のガス機器(コンロ・給湯器)に正常にガスが供給されるか確認します。所要時間は20〜40分程度(東京ガス公式)。立会いといっても、玄関を開けて作業に立ち会うだけです。代理人(親や友人)の立会いでも構いません。

ガスコンロが備え付けの物件ならその場で点火確認もしてくれます。コンロが自前の場合は、コンロを設置してから確認する流れになるので、引越し荷物の中にコンロがあるなら先にキッチンに出しておくとスムーズです。

都市ガスとプロパンガス — 物件選びで確認すべきこと

賃貸物件の「ガス」欄に書いてある「都市ガス」と「プロパンガス(LPガス)」は、料金体系がまったく違います。

都市ガスは東京ガスをはじめとするガス会社がガス管を通じて供給するもので、料金は公共料金に準じた水準。一人暮らしの月額は2,000〜3,500円が一般的です。

プロパンガスはガスボンベで供給されるもので、事業者が自由に料金を設定できます。同じ使い方をしても月額が都市ガスの1.5〜2倍になることがあり、一人暮らしでも月4,000〜7,000円かかるケースが珍しくない。基本料金だけで都市ガスより1,000円以上高い事業者もいます。

年間で見ると、都市ガスとプロパンガスの差は1.2万〜4万円。家賃が数千円安いからとプロパンガスの物件を選んだ結果、ガス代で相殺されるどころか割高になった、という話は大学生の一人暮らしではよくあります。物件情報の「設備」欄に「都市ガス」と書いてあるか、内見時に確認しておくだけで入居後の固定費が変わります。

月々の電気代・ガス代 — 1Kの季節別リアル

東京の1K(20〜25平米)で一人暮らしをしている大学生の光熱費は、電気代とガス代を合わせて月6,000〜10,000円。季節によって振れ幅があります。

時期電気代ガス代(都市ガス)合計
春(4〜5月)3,000〜4,000円2,000〜2,500円5,000〜6,500円
夏(7〜9月)4,500〜6,000円1,500〜2,000円6,000〜8,000円
秋(10〜11月)3,000〜4,000円2,000〜2,500円5,000〜6,500円
冬(12〜2月)4,000〜6,000円3,000〜3,500円7,000〜9,500円

夏はエアコンの稼働で電気代が上がり、冬はエアコン暖房に加えてシャワー時間が長くなる分ガス代も上がる。4月に入居して最初の電気代が3,500円だったのに、7月に5,000円を超えて驚く、というパターンはかなり多い。

ちなみに水道代は東京23区で2ヶ月まとめて3,000〜5,000円(月あたり1,500〜2,500円)。電気・ガス・水道を合計すると、月の光熱費は春秋で7,000〜9,000円、夏冬で8,500〜12,000円というのが1Kの実態です。

この光熱費が毎月の生活費全体の中でどのくらいの割合を占めるかは、生活費の内訳記事で詳しくまとめています。

電気とガスの「セット割」は得なのか

東京ガスは電気とガスをセットで契約すると、電気料金が0.5%割引になる「ガス・電気セット割」を用意しています。CDエナジーダイレクトも電気とガスの両方を契約すると、それぞれの料金から0.5%引きになるセット割がある。

一人暮らしの使用量だと、セット割で年間1,000〜3,000円程度の節約になります。金額だけ見ると大きくはないものの、「請求がひとつにまとまる」「管理画面が1つで済む」という手間の面でのメリットもあります。

セット割を使う場合の選択肢を整理すると:

契約パターン電気ガス特徴
東京電力+東京ガス(別々)スタンダードS一般料金デフォルト。特に手続き不要
東京ガスでまとめる東京ガスの電気東京ガスの一般料金電気料金0.5%割引。ガス料金はそのまま
CDエナジーでまとめるシングルでんきベーシックガス電気・ガス両方0.5%割引。一人暮らしに特化

「入居直後は東京電力+東京ガスのデフォルトで始めて、最初の請求書が届いてから切り替えを検討する」——この順番が一番確実です。切り替え手続きはWebで完結し、工事もガスメーター交換も不要。1〜2ヶ月の電気・ガス代を確認してから判断しても損はしません。

入居前にやること — 手続きのタイムライン

電気とガスの手続きを「いつまでに何をやるか」のタイムラインで整理します。

入居2週間前

ガスの開栓予約をする。東京ガスのWebサイトまたは電話(0570-002-211)で、入居日の訪問を予約。3月末の引越しなら、この時点で予約しないと希望日に来てもらえないことがあります。

入居1週間前

電気の使用開始を申し込む。東京電力のWebサイトで供給地点特定番号と使用開始日を入力。不動産会社の契約書類に番号が書いてあるので、手元に用意しておく。

入居当日

電気は分電盤のブレーカーを上げれば使える。ガスは予約した時間帯に作業員が来るので、立会いをする(20〜40分)。開栓作業が終われば、お湯もコンロも使えるようになります。

入居後1〜2ヶ月

最初の請求書が届いたら、電気代・ガス代の実額を確認。思ったより高い場合は電力会社・ガス会社の切り替えを検討する。セット割や新電力への変更はこのタイミングで十分です。

引越し費用全体の流れも並行して確認しておくと、入居前にやるべきことの全体像が掴みやすくなります。

「うっかり」で起きるトラブル3つ

電気・ガスの手続きは単純ですが、単純だからこそ後回しにして失敗するケースがあります。

1つ目は、ガス開栓の予約忘れ。引越し当日にシャワーが浴びられないだけでなく、自炊もできない。コンビニ弁当とペットボトルの水で初日を過ごすことになります。3月末は予約が1週間待ちになることもあるので、部屋が決まったらすぐにガスの予約だけは入れておく。

2つ目は、プロパンガスだと知らずに契約したケース。内見のときに「ガスの種類」を確認しなかった結果、入居後にガス代の請求で気づく。プロパンガスは事業者の変更が難しい(大家さんや管理会社が指定していることが多い)ため、入居後に「安くしたい」と思ってもどうにもならない。これは部屋探しの段階で見るしかありません。

3つ目は、電気の契約先を不動産会社に勧められるまま決めてしまうケース。不動産会社の窓口で「電気はこちらで手続きしておきますね」と言われ、よくわからない電力会社と契約してしまうパターン。悪質なケースでは割高なプランに加入させられていることもあるので、「電気の契約は自分でやります」と伝えて、自分で東京電力や新電力のWebサイトから申し込む方が安心です。

入居後に見直せること、入居前に決めておくこと

ここまでの話を整理すると、電気・ガスの手続きには「入居前にやらないと困ること」と「入居後にいくらでも変えられること」があります。

入居前にやらないと困ること:

  • ガスの開栓予約(立会い必須、繁忙期は早めに)
  • 電気の使用開始申し込み(Web、入居の1週間前まで)
  • プロパンガスかどうかの確認(物件選びの段階で)

入居後に見直せること:

  • 電力会社の変更(Web手続き、工事不要)
  • ガス会社の変更(都市ガスの場合、Web手続きで切り替え可能)
  • 電気・ガスのセット契約への切り替え

一人暮らしの準備で揃えるものと合わせて、引越しまでのやることリストに電気・ガスの手続きも入れておくと、当日にバタバタせずに済みます。

電気もガスも、一度契約してしまえば毎月自動で引き落とされていくもの。だからこそ、最初に「プロパンガスじゃないか」「電力会社はどこにするか」を確認しておくだけで、4年間の固定費が変わります。引越し準備で忙しい時期ですが、この2つだけは後回しにしない方がいい手続きです。


数値の参照元

  • 一人暮らしの電気代・ガス代の月額目安: 総務省「家計調査」(2024年)単身世帯の水道光熱費データ、および東京電力エナジーパートナー・東京ガス公表の料金表(2026年3月閲覧)をもとに編集部が1K想定で整理
  • プロパンガスと都市ガスの料金差: 石油情報センター「LPガス月別」(2025年公表データ)および東京ガス一般料金表との比較をもとに編集部が整理。プロパンガスの基本料金は一般的な集合住宅向け事業者の公開情報を参照
  • セット割の節約額: 東京ガス「ガス・電気セット割」公式サイト(2026年4月閲覧)およびCDエナジーダイレクト「シングルでんき」「ベーシックガス」公式サイト(2026年4月閲覧)の料金シミュレーションをもとに編集部が一人暮らし想定で概算
  • 東京ガスの開栓予約・立会い手順: 東京ガス公式サイト「ガスの使用開始」ページ(2026年4月閲覧)の案内内容に基づく
  • 東京電力の契約手順: 東京電力エナジーパートナー公式サイト「引越し手続き」ページ(2026年4月閲覧)の案内内容に基づく
  • 水道料金: 東京都水道局の料金表(2026年4月閲覧)をもとに一人暮らし標準使用量で算出
  • 掲載数値は参考値です。実際の電気代・ガス代は使用量・契約プラン・季節によって異なります

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