実家にいた頃は「鍵を閉める」くらいしか防犯を意識したことがなかった、という人がほとんどだと思います。家族の誰かが家にいて、近所付き合いもあって、何かあれば親が対処してくれる。その環境が一人暮らしでは丸ごとなくなります。

警察庁の統計(令和6年)によると、住宅を狙った侵入窃盗は年間約17,000件。1日あたり約46件のペースで発生しています。侵入手口で最も多いのは「無締り」、つまり鍵の閉め忘れで全体の約48%。ガラス破りが約30%で続きます。逆に言えば、鍵を閉めて窓を補強するだけで被害リスクは大きく下がるということです。

この記事でわかること

  • 物件選びの段階で確認しておきたい防犯設備のチェックリスト
  • 入居初日〜1週間以内にやるべき防犯対策
  • 日常生活で意識するだけで効果がある防犯習慣
  • 100均〜3,000円台で買える具体的な防犯グッズと価格
  • 不安を感じたときの相談先(警察・大学・自治体)

物件選びの段階で確認しておきたいこと

防犯対策は部屋探しの時点から始まっています。内見のときに確認しておくと、入居後に「しまった」と思うことが減ります。

階数とベランダの位置

1階の部屋は地面から直接アクセスできるため、侵入リスクが高くなります。2階以上を選ぶだけで防犯性は上がりますが、2階でもベランダの下に足場になるもの(自販機・室外機・塀など)がある場合は要注意。内見のとき、ベランダの外側を見下ろして「ここから登れそうか?」と確認してみてください。

設備のチェックポイント

物件情報に「オートロック付き」「モニター付きインターホン」と書いてあっても、実際の運用状況は物件によって違います。内見時に確認したいポイントをまとめました。

設備確認ポイント
オートロック共用玄関が自動で施錠されるか。裏口や駐輪場側から入れないか
モニター付きインターホン映像が映るか、録画機能はあるか。古い物件だと音声のみの場合もある
ディンプルキーピッキングされにくい鍵かどうか。築古物件はシリンダー錠のことが多い
窓の鍵クレセント錠(半月型の回転錠)だけだと防犯力は低い。補助錠の後付けが可能か
共用部の照明エントランス・廊下・駐輪場が暗くないか。夜間の内見が理想
郵便受け外から手を入れて郵便物を抜き取れない構造か

周辺環境もチェックする

物件の設備だけでなく、周辺の環境も防犯に影響します。帰り道のルートを実際に夜歩いてみるのが一番確実です。駅から物件までの道に街灯がどれくらいあるか、人通りがあるか、コンビニなどすぐに駆け込める場所があるか。Google マップのストリートビューでもある程度は確認できますが、夜の雰囲気は現地に行かないとわかりません。

入居後すぐにやること

鍵を受け取ってから1週間以内にやっておきたい防犯対策です。引越しのバタバタで後回しにしがちですが、空き巣は入居直後の「まだ慣れていない時期」も狙います。

鍵交換の確認

賃貸物件では、入居時に鍵交換を行うのが一般的です。契約書に「鍵交換費用」として1万5,000円〜2万円程度が計上されているはず。もし記載がなければ、管理会社に「前の入居者と鍵は変わっていますか?」と確認してください。鍵交換がされていないと、前の住人が合鍵を持っている可能性がゼロではありません。

表札は出さない

一人暮らしの部屋に表札を出す必要はありません。名前が表に出ていると「ここに誰が住んでいるか」が外からわかってしまいます。女性の場合、下の名前やイニシャルから性別が推測されることもあります。郵便物は部屋番号だけで届きます。

窓に補助錠を付ける

賃貸の窓に最初から付いているクレセント錠(半月型のロック)は、実は防犯性能が低い。外からガラスの一部を割ってクレセント錠を回す手口が、侵入窃盗の定番です。

対策として、窓のサッシに補助錠を追加します。ダイソーの「サッシ用補助錠 窓ロック」(110円)はサッシレールに挟んでネジを締めるだけで取り付けられます。窓の上下2箇所に付けるとより効果的。退去時に外せるので賃貸でも問題ありません。

ドアスコープ(覗き穴)にカバーを付ける

玄関のドアスコープは室内から外を確認するためのものですが、特殊な工具を使えば外から室内を覗けてしまう構造です。100均で売っているドアスコープカバーを貼っておくだけで、外からの覗き見を防げます。キャンドゥの「のぞき見防止!ドアスコープカバー」(110円)は両面テープで貼るだけなので、工具も不要です。

日常の防犯習慣

設備を整えたあとは、毎日の習慣が防犯の核になります。「気をつけよう」ではなく、具体的に何をするか決めておくのが大事です。

カーテンの選び方と使い方

遮光カーテンを選んでください。在宅・不在が外から見えないようにするためです。レースカーテンも遮像タイプ(ミラーレース)にしておくと、昼間にカーテンを開けていても室内が見えにくくなります。ニトリの遮光1級カーテンが2枚組で3,000円台から購入できます。

帰宅が遅くなる日は、出かける前にリビングの照明をタイマーでつけておくと、在宅に見えるので効果があります。SwitchBotのスマートプラグ(約2,000円)を使えば、スマートフォンから照明のオン・オフを遠隔操作できます。

洗濯物で生活パターンを読ませない

ベランダに干す洗濯物から「一人暮らしの女性」と特定されることがあります。下着は室内干しが基本。外干しする場合も、男性用の大きめのタオルやTシャツを一緒に干しておくと、一人暮らしかどうか判断しにくくなります。

部屋干し派なら問題ありませんが、外干し派の人は「洗濯物を出しっぱなしにして帰りが遅い」状態を作らないようにしましょう。長時間の外干しは不在のサインになります。

SNSに位置情報を載せない

InstagramやX(旧Twitter)に「今から出かけます」「旅行中」と投稿すると、不在であることが公開情報になります。位置情報をオンにしたまま自宅周辺で撮った写真を上げると、住んでいるエリアが特定されるリスクもあります。

写真を投稿する際は位置情報をオフにする。リアルタイムの行動をSNSに上げない。旅行の写真は帰宅後にまとめて投稿する。これだけでリスクはかなり減ります。

帰宅時のルーティン

玄関のドアを開ける前に、周囲に人がいないか確認する。部屋に入ったらすぐにドアを閉めて施錠する。「鍵を開けてからスマホを見ながらゆっくり入る」のは危険です。

オートロックのマンションでも、共連れ(住人の後ろについて入る)で不審者が建物内に入ってくることがあります。エレベーターで知らない人と二人きりになったときは、次の階で降りて階段を使うくらいの意識を持っておくと安心です。

1,000円〜3,000円で揃える防犯グッズ

高価なホームセキュリティに加入しなくても、手の届く価格で防犯力を上げられるグッズがあります。

グッズ購入場所価格帯用途
サッシ用補助錠(窓ロック)ダイソー110円窓のサッシに挟んで固定。ガラス破りによるクレセント解錠を防ぐ
ドアスコープカバーキャンドゥ / セリア110円両面テープで貼るだけ。覗き見防止
防犯ブザー(ブザー付きライト〜本格モデル)ダイソー110〜550円通学カバンに付けておく。引っ張ると大音量で鳴る
ドアストッパーアラームAmazon1,000〜1,500円ドアの下に挟む。ドアが開くと120dBのアラームが鳴る
窓用防犯アラーム(開閉検知)Amazon / ホームセンター800〜1,500円窓に貼り付ける。開閉を検知してアラームが鳴る
人感センサーライト(屋内用)ダイソー / Amazon330〜1,500円玄関内に置く。帰宅時に自動で点灯し、在宅感も演出できる
見守りカメラSwitchBot等3,780円〜スマホから室内を確認。外出中に異常がないかチェックできる

全部揃える必要はありません。優先度が高いのは「窓の補助錠」「ドアスコープカバー」「防犯ブザー」の3つ。合計330円から始められます。

困ったときの連絡先

「怖いけど110番するほどではない気がする」——こう思って一人で抱え込むのが一番良くないパターンです。迷ったら電話してください。「大げさかも」と思う相談でも、対応してもらえます。

緊急時は110番

目の前に不審者がいる、ドアを叩かれている、今まさに危険を感じる——この場合は迷わず110番。通報すると最寄りの警察署からパトカーが出動します。住所を伝えればすぐに来てもらえるので、自分の部屋の住所は暗記しておくかスマートフォンのメモに入れておきましょう。

緊急ではないが不安なときは #9110

警察相談専用電話 #9110 は、犯罪には至っていないけれど不安を感じる場合に使える全国共通の番号です。「帰り道にずっと後をつけられた気がする」「郵便受けの中身が荒らされていた」「同じ人が何度も家の前にいる」——こうした相談に警察が対応してくれます。

受付時間は平日の8:30〜17:15(都道府県によって異なる)。土日祝は当直対応になりますが、つながらない場合は翌営業日にかけ直してみてください。

大学の学生相談窓口

ほとんどの大学には学生相談室やカウンセリングルームがあります。ストーカー被害や不審者トラブルの相談に乗ってくれるだけでなく、必要に応じて警察や弁護士への橋渡しもしてもらえます。学務課や学生課に「防犯や安全に関する相談をしたい」と伝えれば、担当窓口を案内してもらえるはずです。

自治体の相談窓口

東京都の場合、「東京都消費生活総合センター」(03-3235-1155)で悪質な訪問販売やセールスの被害相談ができます。引越し直後は「NHKです」「インターネットの契約確認です」といった訪問が多くなる時期。居留守を使うのが一番ですが、対応してしまったあとに不安を感じたら、この窓口に相談してください。

相談先電話番号対応内容
警察(緊急)110今すぐ助けが必要なとき
警察相談専用電話#9110緊急ではない防犯相談・不審者情報
大学の学生相談室各大学によるストーカー・不審者・心理面の相談
消費生活センター188(いやや)悪質な訪問販売・詐欺の相談

「やりすぎ」でちょうどいい

防犯対策は「ちょっと大げさかな」と思うくらいがちょうどいいバランスです。実家にいたときは家族がカバーしてくれていた部分を、一人暮らしでは自分でやるだけ。

110円の窓ロック、ドアスコープカバー、防犯ブザー。この3つを入居初日に付けるだけでも、部屋の防犯力は確実に上がります。あとは鍵を閉める、カーテンを閉める、SNSで自宅が特定される投稿をしない。高額な費用をかけなくても、習慣と数百円のグッズで自分の生活を守れます。

何か不安を感じたら、一人で抱え込まずに相談する。110番、#9110、大学の窓口。頼れる場所は複数あります。安全な部屋をベースにして、大学生活を楽しんでください。


参照元

  • 住宅対象侵入窃盗の統計: 警察庁「令和6年の犯罪情勢」をもとに編集部が整理
  • 侵入手口別の割合(無締り・ガラス破り): 警察庁の公表統計をもとに編集部が整理
  • 防犯グッズの価格: ダイソーネットストア、Amazon.co.jp、SwitchBot公式サイトの掲載価格(2026年4月時点)
  • 警察相談専用電話 #9110 の受付時間: 警視庁公式サイト・政府広報オンラインの公表情報
  • 掲載価格は参考値です。店舗・時期・在庫状況によって異なります