「留学したい」と思っても、ルートは1つではありません。大学の交換協定を使う交換留学、夏休みに語学学校へ行く短期語学留学、2校の学位を取るダブルディグリー、海外インターンと組み合わせる留学、ワーキングホリデー——それぞれ費用も期間も準備の流れも違います。
自分の目的と予算に合うルートを選び、語学試験・ビザ・奨学金・休学手続きを逆算で進めていくのが留学準備の基本です。出発の1年前から動き出すのが現実的なスケジュール感で、短期留学でも半年前には動き始めたいところ。
この記事でわかること
- 留学の5つのルート(交換留学・語学留学・ダブルディグリー・インターン留学・ワーホリ)の違い
- 期間別(短期・セメスター・1年間)で変わる費用と準備のボリューム
- 奨学金(JASSO・トビタテ・大学独自・民間財団)の使い分け
- 語学試験(TOEFL・IELTS・TOEIC)のスコア目安
- 休学料・学籍維持・ビザ取得・帰国後の単位認定までの流れ
留学のルートは5つある — 目的で選ぶ
「留学」と一括りにされがちですが、中身はかなり違います。学位・単位が欲しいのか、語学力を伸ばしたいのか、就業経験が欲しいのか、生活体験がしたいのか。目的が決まるとルートは自動的に絞られます。
交換留学
所属大学が海外大学と結んでいる協定に基づいて、協定校に1セメスター〜1年間在籍するルート。最大の特徴は「留学先の学費が免除」になること。日本の大学に学費を払い続ける形になるので、現地での学費負担がなく、実質的な追加コストは渡航費・滞在費・食費に絞られます。
早稲田は世界約90カ国・地域の大学と協定があり、明治・中央・立教なども協定校のネットワークを持っています。選考はGPA(大学の成績)と語学スコアで決まることが多く、人気の協定校(ヨーロッパ・オーストラリアなど)は倍率が高い。定員のある派遣型のため、計画的に準備した学生が勝ちやすい仕組みです。
単位互換が認められれば、留学中に取った科目を日本の大学の卒業単位に換算できます。うまく使えば「休学せずに4年で卒業+1年の留学経験」が成立するルート。
語学留学
語学学校に数週間〜1年間通うルート。大学の単位には基本的に結びつかず、語学力の向上そのものを目的にします。夏休み・春休みを使った1〜2ヶ月の短期留学が人気で、大学の長期休暇をフル活用できるのが強み。
費用は期間と国で大きく変わり、安価な国・コースの場合で1ヶ月30万〜50万円、3ヶ月60万〜100万円が目安。1年滞在の語学留学は国・地域で大きく変動し、後述の費用相場表のとおりアメリカで265万〜405万円、オーストラリアで190万〜300万円程度になります。留学エージェント経由で申し込むのが一般的ですが、語学学校のサイトから直接申し込むと中間マージンを削れる場合もあります。
ダブルディグリー
2つの大学で学位を同時に取得するルート。日本の大学と海外の大学が共同でプログラムを設計し、規定年数で両方の学位を得られる仕組み。通常の交換留学より踏み込んだ制度で、設置している大学は限られます(早稲田・慶應・上智・ICU・立命館など)。
学位が2つ手に入る強力な選択肢ですが、卒業要件が通常より厳しく、5年間で両学位を取るケースが多い。学費も日本の大学+海外の大学の両方を支払う形が基本で、総額500万〜800万円に達することもあります。選抜時点で高いGPAと語学スコアが要求されるハードルの高いルートです。
インターン留学
海外企業での就業経験と組み合わせる留学。語学学校+インターンのパッケージプログラムや、大学のキャリアセンター経由で企業とマッチングするケース、個人で応募するケースがあります。就活で海外就業経験をアピールしたい学生に人気のルート。
インターン先によっては無給インターンで、滞在費・生活費は自己負担。有給インターンでも現地の最低賃金レベルで、渡航費・滞在費を相殺できるほどではないのが実情です。期間は1〜6ヶ月が中心で、短期語学留学+現地インターンの2段階プログラムを選ぶ学生が多い。
ワーキングホリデー
協定国(オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、フランス、ドイツ、韓国など)で働きながら滞在できるビザ制度。18〜30歳(国によって31歳まで)が対象で、1年間(国によって2〜3年延長可)滞在できます。大学を休学して利用する学生が毎年一定数います。
学位や単位とは無関係の制度で、あくまで「生活体験」「就労経験」が目的。現地で働いてお金を稼げるのがワーホリの最大のメリットですが、語学力が不十分だと接客系の仕事に就くのが難しく、皿洗い・清掃などの労働中心になることもあります。
期間別の目安 — 短期・セメスター・1年
どのルートを選ぶかと並行して、期間を決めます。期間が短いほど準備は軽く、長いほど費用も手続きも大きくなります。
短期(1〜2ヶ月、夏休み・春休み)
語学学校が中心の選択肢。大学の長期休暇にぴったり収まるので休学不要で、GPAに影響しません。費用は1ヶ月で30万〜50万円、2ヶ月で50万〜80万円。航空券の時期(夏・年末年始のピーク)で5万〜10万円上下します。
短期の場合、ビザが不要または観光ビザで済む国が多く、手続きの負担が小さい。アメリカはVWP/ESTAで90日以内の滞在が可能ですが、ESTAで認められる学習は『休暇中の短期・非単位の娯楽的コース』等に限定され、本格的な語学学校通学はF-1学生ビザの取得が必要になることがあります。カナダは6ヶ月以内ならeTA、オーストラリアは3ヶ月以内なら観光ビザ(ETA)、イギリスは6ヶ月以内ならStandard Visitorで入れます。短期語学留学を計画する場合は、行き先国大使館または語学学校に滞在ビザの要否を確認します。学生ビザが不要な場合、準備期間は3〜4ヶ月あれば間に合う計算です。
セメスター(4〜6ヶ月)
交換留学の標準パターン。1学期分を海外で過ごし、残りの学期は日本の大学に戻ります。交換留学なら現地の学費が免除されるので、出費は渡航費・滞在費・食費・保険・雑費で、合計80万〜150万円。
セメスター留学は学生ビザが必要になるのが一般的。ビザ取得には大学からの入学許可書(I-20など)、財政証明、パスポート、健康診断結果が必要で、大使館面接の予約まで含めると2〜3ヶ月かかります。セメスター開始の1年前から動き出すと余裕を持って準備できます。
1年間
交換留学・語学留学・ダブルディグリーのいずれも、1年間滞在が最もインパクトのある期間。語学力も対人関係も「本気で変わる」のはこの長さから。交換留学なら100万〜200万円、語学留学なら80万〜150万円、ワーホリなら70万〜150万円(働いて相殺する前提)が相場です。
1年間の場合、日本の大学を休学するか、交換留学で単位互換を取って休学せずに過ごすかの選択が出てきます。休学した場合は卒業が1年遅れ、就活タイミングもずれます。この判断は出発前に家族と相談しておきたいポイントです。
費用の相場 — ルート別の目安
ルート×期間で費用は大きく変わります。以下は1年間留学したときの概算です。
| ルート | 学費 | 滞在費 | 渡航費 | その他 | 合計目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| 交換留学(アメリカ) | 免除 | 100万〜150万円 | 15万〜25万円 | 30万〜50万円 | 150万〜225万円 |
| 交換留学(ヨーロッパ) | 免除 | 80万〜120万円 | 15万〜20万円 | 20万〜40万円 | 115万〜180万円 |
| 語学留学(アメリカ・1年) | 120万〜180万円 | 100万〜150万円 | 15万〜25万円 | 30万〜50万円 | 265万〜405万円 |
| 語学留学(オーストラリア・1年) | 80万〜120万円 | 80万〜120万円 | 10万〜20万円 | 20万〜40万円 | 190万〜300万円 |
| ダブルディグリー | 200万〜400万円 | 100万〜150万円 | 15万〜25万円 | 50万〜100万円 | 365万〜675万円 |
| ワーホリ(オーストラリア) | 0円 | 70万〜120万円 | 10万〜20万円 | 20万〜40万円 | 100万〜180万円(就労で相殺可) |
交換留学は学費免除のインパクトが大きく、総額では最も効率的なルート。逆にダブルディグリーは学位2つのリターンがある代わりに負担も大きい。ワーホリは現地で働いて稼げるので、実質負担は留学前の準備金(50万〜80万円)で始められることもあります。
奨学金 — 使える制度を把握しておく
留学費用の大きな部分を奨学金でカバーできるかどうかが、実現性を左右します。主な奨学金制度は以下の4つ。
JASSO「海外留学支援制度」
日本学生支援機構(JASSO)が提供する奨学金。「協定派遣」「協定受入」「学位取得型」の3種類があり、大学経由で申請します。給付額は2026年度「協定派遣」で月額8万円・9万円・11万円・12万円の4区分があり、渡航先の地域・物価水準で差がつきます。返還不要の給付型なので、使い勝手の良い制度です。
JASSOの申請は大学の国際交流センター経由。交換留学の選考結果が出た後に、同じ大学から推薦してもらう流れ。留学決定からJASSO申請まで数ヶ月で回るスケジュールが多いので、留学選考の段階から「JASSOも併願する」と念頭に置いておくと動きやすい。
トビタテ!留学JAPAN
文部科学省が官民共同で運営する大型留学支援プログラム。学生が自分の留学計画を「探究型プロジェクト」として企画し、選抜を通れば2026年度の大学生等対象では月額12万円または16万円(家計基準外は6万円)、留学準備金15万または25万円、授業料補助上限30万円が支給されます。返還不要の給付型で、長期コースなら総額が大きくなる構造です。
審査は書類+面接の2段階で、倍率は5〜7倍とかなり厳しい。自分の問題意識を「こういう課題を解決したいから、この国でこの研究/実習をする」というストーリーに落とし込めるかが鍵です。新・日本代表プログラム(大学生等向け)は年1〜2回の募集があり、出発の6ヶ月前までに選考が終わる設計になっています。
各大学独自の奨学金
慶應義塾大学の学習奨励金、立教大学・明治大学の海外留学奨学金、早稲田大学の海外派遣留学奨学金など、大学独自の留学奨学金が整備されています(早稲田の『めざせ!都の西北奨学金』は入学前予約型の在学奨学金であり留学奨学金ではない点に注意)。支給額は月額3万〜10万円、または一括で20万〜80万円の給付型が中心です。
大学独自の奨学金は選考倍率が外部奨学金より低いことが多く、「JASSOと併願できるか」「トビタテと併給可能か」は制度ごとに異なります。国際交流センターで確認してから申請しましょう。
民間財団の奨学金
伊藤国際教育交流財団、本庄国際奨学財団、柳井正財団、平和中島財団、中島記念国際交流財団など、民間財団の留学奨学金もあります。月額15万〜30万円+学費補助と高額ですが、倍率は高く、対象も修士・博士課程中心のものが多い。
学部生向けの奨学金としては「柳井正財団海外奨学金」(ハーバード・MIT等の海外トップ校進学者対象)、平和中島財団(日本国籍の学部・大学院生対象)などが該当します。応募時期は出発の1〜1.5年前が多く、早めの情報収集が必要。
語学試験 — スコアの目安
交換留学・ダブルディグリー・正規留学では、ほぼ例外なく語学スコアが出願条件になります。
| 試験 | 交換留学の目安(従来スコア) | 正規留学の目安(従来スコア) | 受験料 |
|---|---|---|---|
| TOEFL iBT | 72〜80(新スケール約3.5〜4) | 80〜100(新スケール約4〜5) | 約245ドル |
| IELTS | 6.0〜6.5 | 6.5〜7.5 | 27,500円〜29,900円(形式・実施団体により異なる) |
| TOEIC L&R | 700〜800 | 800〜900 | 7,810円 |
TOEFLとIELTSは北米・ヨーロッパ・オセアニアの多くの大学で受け入れられる国際標準。TOEIC L&RはETSが作成し、日本ではIIBCが運営している試験で、海外大学の出願では使えないことが多いものの、日本の大学の交換留学選考では採用される場合があります。なおTOEFL iBTは2026年1月21日からスコアスケールが0〜120から1〜6に切り替わっており、出願先大学の最新の要求スコア表記を確認してください。
受験対策には2〜3ヶ月、スコアに自信がなければ半年〜1年の準備期間を見ておきたい。留学の決意と同時に試験対策を始めるのが理想で、「出願時点でスコアがある」状態を作るのが準備の中核です。
休学の扱い — 大学ごとに違う
休学して留学する場合、大学ごとの休学料と学籍維持の扱いを確認しておきます。早稲田大学は休学中の在籍料が約10万円/年、明治大学は約20万円/年、慶應義塾大学は学費の半額程度、中央大学は約10万円/年など、金額に幅があります。
休学するかどうかは「単位互換が使えるか」で決まることが多い。交換留学で単位互換が認められれば休学不要、語学留学・ワーホリでは基本的に休学が必要になります。休学届の提出期限は大学・学部・研究科によって異なり、早稲田は学部により休学開始日の数週間前〜1学期前、明治は学部により春5/31・秋11/20など別期日が設定されています。国際交流センターと教務課の両方で手続きする必要があるので、必ず所属学部・研究科のページで最新期限を確認し、時間的余裕を持って進めます。
留年するか1年遅れで卒業するかは、就活のタイミングに直結します。1年休学すると卒業が1年遅れ、採用年度が1年後ろにずれる。このタイミングを受け入れられるか、家族に相談してから決断するのが無難です。
ビザ手続き — 学生ビザは早めに動く
長期留学には学生ビザが必要です。国ごとの違いを押さえておきましょう。
アメリカ: F-1ビザ
大学からI-20(入学許可書)を受け取った後、SEVIS費用(約350ドル)を支払い、DS-160(オンライン申請書)に記入、ビザ申請料(約185ドル)を支払ってから、大使館で面接予約を取ります。面接は東京または大阪で実施され、予約から面接まで数週間〜2ヶ月かかる時期もあります。
パスポート、DS-160確認書、証明写真、I-20、SEVIS費用支払い証、財政証明(銀行残高証明など)、成績証明書を持参して面接に臨みます。面接そのものは10〜15分で、ビザが承認されるとパスポートに貼付されて約1週間で手元に届きます。
ヨーロッパ(シェンゲン圏): 国によって異なる
ドイツ、フランス、オランダ、スペインなど国ごとに申請方法が異なります。ドイツは滞在先の市区役所での住民登録が必要、フランスはCampus Franceという事前登録機関を通す必要があるなど、国ごとの手続きに注意。
オーストラリア: 学生ビザ(Subclass 500)
オンライン申請(ImmiAccount)で完結します。入学許可書、OSHC(海外留学生用健康保険)加入証、GS(Genuine Student、2024年3月23日以降の新要件。従来のGTEから置換)説明書、財政証明などをアップロードします。申請料は2025年7月1日以降、主申請者ベースで2,000豪ドル(従来1,600豪ドルから増額)。
カナダ: 学習許可証(Study Permit)
6ヶ月以上の留学で必要。オンライン申請でバイオメトリクス(指紋・顔写真)の登録が求められます。手数料は150カナダドル+バイオメトリクス登録料85カナダドル。
ビザ申請には1〜3ヶ月の余裕を見ておくのが安全。大学からの入学許可書を受け取ってからしか申請できないので、大学の選考 → 入学許可 → ビザ申請の順で動きます。
帰国後 — 単位認定と就活への活かし方
留学先で取った科目を日本の大学の単位に換算できるかは、留学前に教務課で確認しておきたい重要ポイントです。交換留学では「留学先のシラバス + 受講完了証明 + 成績」を提出して単位換算の審査を受ける流れが一般的。履修計画の段階で「この科目は日本のあの科目と換算できそうか」を確認しておくと、帰国後の手続きがスムーズです。
就活への活かし方は、留学経験そのものより「留学で何を得たか、どう行動したか」を語れるかで差がつきます。留学中に取り組んだプロジェクト、語学力の伸び、多国籍環境での協働経験など、具体的なエピソードで語れるように現地でもメモを残しておくといい。
1年留学すると卒業が1年遅れるケースが多く、就活のスケジュールは「通常より1年遅れ」になります。採用側は留学生活を前向きに評価することが多いので、遅れ自体はそこまでマイナスにはなりません。ただし業界・企業によっては「新卒枠から外れる」扱いになることもあるので、志望業界の採用ポリシーは確認しておきたい。
まとめ
留学のルートは5つ(交換留学・語学留学・ダブルディグリー・インターン留学・ワーホリ)あり、目的と予算で選び方が変わります。学費免除のインパクトが大きいのは交換留学。語学力に集中したいなら語学留学、学位2つを取るならダブルディグリー、就業経験ならインターン留学、生活体験ならワーホリが基本の対応関係です。
費用は1年間でルート・地域により大きく変わり、交換留学なら115万〜225万円、語学留学(英語圏)なら190万〜405万円、ワーホリなら100万〜180万円(現地就労で相殺可)が相場帯。JASSO・トビタテ・大学独自・民間財団の奨学金を組み合わせれば、自己負担を大きく減らせます。語学試験のスコア(TOEFL iBT 80+程度=新スケール約4〜5、IELTS 6.0+、TOEIC L&R 700+)、休学手続き、ビザ取得の3つが準備の中心で、出発の1年前から動き出すスケジュールが現実的。
「留学したい」と思った時点から情報収集を始めるのが近道です。大学の国際交流センターに相談し、奨学金の応募時期を逆算し、語学試験対策を走らせる——この3つを並行で進めれば、半年〜1年後の出発が見えてきます。
数値の参照元
- JASSO「海外留学支援制度」の給付額: 日本学生支援機構公式情報(2026年4月閲覧)をもとに編集部が整理
- トビタテ!留学JAPAN支給額: 文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」公式情報(2026年4月閲覧)をもとに編集部が整理
- 各大学の休学料: 早稲田大学・慶應義塾大学・明治大学・中央大学の公式学費情報(2026年4月閲覧)をもとに編集部が整理
- 留学費用の相場: 各留学エージェントの公開料金帯(2025〜2026年)および編集部ヒアリングをもとに算出
- 語学試験の受験料: TOEFL・IELTS・TOEIC各公式サイト掲載情報(2026年4月閲覧)
- ビザ申請料・手続き: アメリカ大使館・オーストラリア内務省・カナダ移民局の公式情報(2026年4月閲覧)をもとに編集部が整理
- 掲載情報は参考値です。費用・制度は為替・各機関の改定により変動する可能性があります
- 各奨学金・大学制度・ビザ制度の名称は一般的な情報として記載しており、特定制度の推奨ではありません