日吉駅の改札を出て右を向くと、慶應義塾大学の銀杏並木がまっすぐ伸びています。横断歩道を渡ればキャンパス。左を向けば、ひようら(日吉商店街の通称)の飲食店が狭い路地に詰まっている。通学時間ゼロ、昼飯は3分で着く場所にある。日吉に住むとは、大学生活の中心地にそのまま暮らすということです。

この記事では、慶應の日吉キャンパスに通う一人暮らしの視点から「日吉は結局住みやすいのか」を正直に評価します。

この記事でわかること

  • 港北区の治安データと日吉駅周辺の実態
  • ひようらの食事・帰り道の買い物事情
  • 東急東横線で渋谷25分、横浜10分の交通アクセス
  • 月12万円台の生活コスト内訳
  • 坂の多さと銀杏並木の臭い――住んでから気づく注意点
  • 元住吉・綱島に住む慶應生との暮らしの違い

治安 ── 港北区は横浜市内でも落ち着いたエリア

日吉は横浜市港北区に位置しています。港北区は横浜市18区の中で人口が最も多い区ですが、治安は比較的安定しています。

神奈川県警の統計(2024年)によると、港北区の刑法犯認知件数は年間約1,400件前後。横浜市18区の中では中位の水準で、繁華街を抱える中区(約3,000件)や西区と比べると半分以下です。日吉駅周辺(日吉・日吉本町地区)に限ると、報告される犯罪の多くは自転車盗難や万引きで、空き巣やひったくりの発生はごく少ない。

駅の西口にはひようらの飲食店街があり、金曜の夜は慶應生の飲み会で賑やかになります。ただ、さかえ通り(高田馬場)のような大規模な居酒屋街とは規模が違う。夜23時を過ぎると人通りは減って、駅前の通りも静まってきます。

東口は慶應義塾大学のキャンパスと住宅街。夜は人通りが少なくなりますが、街灯は整備されていて暗い印象はありません。女性の一人暮らしでも、駅から徒歩10分圏内であれば夜道に過度な不安を感じる環境ではないでしょう。

ひようらを歩けば食事に困らない

日吉で暮らす慶應生の昼食は、たいていひようらで解決します。

キッチンとらひげは長く愛されているひようらの老舗洋食店で、ハンバーグやロースかつの盛りの良さに最初は驚くかもしれません。「迷ったらとらひげ」が日吉の先輩の口癖になっていたりします。日吉中央通り商店街に位置していて、商店街公式サイトに住所・営業時間が掲載されています。価格・営業時間は店頭またはGoogleマップで最新を確認してください。

HI, HOW ARE YOUは駅から徒歩2分のカレー専門店で、カウンター席が多くひとりでもさっと入れます。ボリュームのあるスパイスカレーが800円前後。ラーメンならすすきの(味噌ラーメン)やひようらの路地裏にある小さな店が何軒もあり、1杯750〜900円で収まる。

チェーン系も駅周辺に揃っています。松屋、すき家、マクドナルド、日高屋。ひとりで手早く済ませたい日は選択肢に困りません。

ひようら全体で見ると、食べログやGoogleマップに掲載されている飲食店は40店以上。昼の予算500〜1,000円、夜の飲み会で飲み放題コース2,500〜3,500円。学生の財布に合わせた価格帯が街全体に浸透しているのは、日吉に住む一番の安心材料です。

帰り道にスーパーが揃っている

日吉の買い物動線は、駅ビルの日吉東急アベニューを軸に回ります。

日吉東急アベニュー(駅直結)の1階には食品フロアがあり、鮮魚・精肉・野菜が一通り揃います。営業は10:00〜21:00で、授業終わりの夕方に寄る慶應生は多い。品質は「デパ地下」と「スーパー」の中間くらいの位置づけで、惣菜やお弁当も並んでいます。

まいばすけっと日吉駅西口店(7:00〜24:00、日吉本町1-2-9)は駅のすぐ近く。牛乳、卵、冷凍食品など日常の買い足しはここで事足ります。帰る方角によっては駅東側のマルエツ日吉南店(9:00〜翌1:00)に切り替える動線も組めます。

リコス日吉本町1丁目店(24時間営業)は、以前ミニピアゴだった店舗がリニューアルした小型スーパー。深夜にレポートを書いていて何か食べたくなったとき、24時間開いているスーパーがあるのは地味に心強い。

自炊をするなら日吉東急+まいばすけっとで平日を回して、週末にまとめ買いが必要なときは元住吉のライフまで足を伸ばすパターンも現実的です。元住吉までは東横線で1駅、徒歩でも15分ほど。

東急東横線の交通力 ── 渋谷25分、横浜10分

日吉駅には東急東横線・東急目黒線・東急新横浜線・横浜市営地下鉄グリーンラインの4路線が乗り入れています。2023年3月に開業した東急新横浜線で、新横浜・相鉄沿線へも乗り換えなしで出られるようになりました。

主要駅への所要時間

行き先路線所要時間(目安)
渋谷東横線(急行)約25分
横浜東横線(急行)約10分
新宿三丁目東横線→副都心線直通約35分
池袋東横線→副都心線直通約40分
武蔵小杉東横線約5分
三田(田町)目黒線→三田線直通約30分

渋谷まで東横線の急行で約25分。副都心線に直通しているため、新宿三丁目・池袋にも乗り換えなしで行けます。横浜へは急行で約10分。都心にも横浜にも出やすい位置にあるのは、日吉の大きなアドバンテージです。

3年から三田キャンパスに移る文系学部の人は、目黒線から三田線への直通運転で日吉→三田が乗り換えなし約30分。日吉に住んだまま三田に通い続ける慶應生は少なくありません。

終電と深夜の帰宅

路線方面最終発車(目安)
東横線渋谷方面0:00ごろ
東横線横浜方面0:10ごろ
目黒線目黒方面0:00ごろ

渋谷からの終電(日吉行き)は23:50ごろ。高田馬場の山手線(0:20ごろ)と比べると20分ほど早く、終電を逃すリスクは若干高い。渋谷で飲んでいて23時半を過ぎたら、そろそろ帰りの電車を意識する必要があります。

終電を逃すとタクシーになりますが、渋谷→日吉は距離にして約15km。深夜料金で8,000〜10,000円かかることもある。この点は高田馬場(新宿から5分・0:20まで山手線あり)と比較すると明確なデメリットです。

月12万円台の生活コスト

日吉は「ひようらで外食+まいばすけっとで自炊」の組み合わせで食費を抑えやすい街です。

外食と自炊の組み合わせパターン(月約12.5万円)

項目月額
家賃(1K、6.5万円の物件)65,000円
食費(昼は外食、夜は自炊中心)28,000円
光熱費(電気・ガス・水道)8,000円
通信費(スマホ+Wi-Fi)5,000円
交通費(通学は徒歩、都度利用分)3,000円
日用品・雑費5,000円
交際費8,000円
合計約122,000円

昼はひようらで700〜900円、夜はまいばすけっとで買った食材で自炊。朝はパンとコーヒー程度。このパターンなら食費を月2.8万円前後に収められます。

通学は徒歩なので交通費がほぼかからないのも日吉の利点。渋谷や横浜に出るときの電車代(片道280〜310円)を月に数回使う程度です。

家賃を抑えるパターン(月約10.5万円)

日吉駅から徒歩12〜15分の日吉本町方面に行けば、5万円台前半のワンルームも出てきます。坂が急になるエリアですが、家賃を最優先にするならこの選択もあり。食費は自炊中心で月2万円を目指せば、月10.5万円で暮らすことも不可能ではありません。

坂の多さ ── 日吉で一番の生活ストレス

日吉は多摩丘陵の端に位置しているため、駅から離れると坂が多くなります。これは住んでから最も実感する不便さです。

駅の東口は慶應のキャンパスに向かう銀杏並木の坂。西口はひようらを抜けた先に住宅街の坂。日吉本町方面(駅の南西側)は特に傾斜がきつく、自転車で登るのは現実的でない道もあります。

物件を選ぶとき、「駅まで徒歩10分」と書いてあっても、途中に急坂があると体感ではもっとかかる。内見のときに必ず駅から物件まで歩いてみて、坂の勾配を自分の足で確認してください。夏場に荷物を持って坂を登る場面を想像すると、判断がはっきりします。

自転車を使おうと考えている人は要注意。平坦な道だけで大学と自宅を往復できるかどうかを確認してから購入しないと、結局使わなくなる可能性があります。

銀杏並木 ── 秋だけは覚悟が必要

日吉キャンパスの銀杏並木は長さ約220m・約100本のイチョウが並ぶ名所で、秋には黄金色のトンネルになります。「横浜市まちなみ景観賞」を受賞したこの風景は日吉のシンボルそのものです。

ただし、10月下旬〜11月にかけてはギンナンの実が落ちる季節。あの独特の臭いは、毎日キャンパスを通る人にとって無視できません。並木道を歩くたびに靴の裏を気にすることになるし、風向きによっては駅前まで臭いが届く日もある。この時期だけは「日吉の唯一の弱点」と言ってもいいかもしれません。

11月中旬を過ぎると黄葉がピークを迎え、週末には近隣から見物に来る人も増えます。それ自体は美しい光景ですが、毎朝通学で通る立場としては「きれいだけど臭い」が正直な感想になりがちです。

空きコマの居場所

日吉メディアセンター(大学図書館・自習スペースあり)は授業の合間に課題を片付ける王道の場所です。ただ試験期間中は座席が埋まる。

スターバックスコーヒー日吉店は1階と2階で約60席。電源とWi-Fiが使えて朝7時から営業しているので、1限前の朝活にも使えます。混み始めるのは昼前後。タリーズコーヒー慶應日吉店も電源席があるので、スタバが満席のときの逃げ場として覚えておくと便利です。

ひようらのカフェは大型チェーンほど席数がなく、勉強道具を広げるには手狭な店が多い。長時間の作業なら日吉メディアセンターかスタバに行くのが現実的です。

日吉の住民層と街の空気

日吉駅周辺の住民は、慶應義塾大学の学生とファミリー層の二層構造です。キャンパス側(東口)は学生が多く、ひようら側(西口)も慶應生の日常動線。一方で、駅を少し離れると落ち着いた住宅街が広がっていて、子育て世帯も多い。

高田馬場が「学生街が街の全体を覆っている」のに対して、日吉は「駅前だけが学生街で、少し離れると住宅街」という構造。この違いは夜の静かさに表れます。ひようらの賑やかさは駅の半径200mに収まっていて、5分歩けば静かな住宅地に入る。

「大学の雰囲気のまま暮らしたい」ならひようら寄りの物件を。「静かに過ごしたい」なら日吉本町方面を。駅からの方角と距離で、生活の雰囲気がかなり変わります。

日吉に住む慶應生と、元住吉・綱島に住む慶應生の違い

慶應の日吉キャンパスに通う学生は、全員が日吉に住んでいるわけではありません。1駅隣の元住吉や2駅先の綱島を選ぶ人もいます。それぞれの暮らしはどう違うのか。

日吉に住む場合

通学時間ゼロ。朝8時40分に起きても1限に間に合う。サークルの集まりが終わって23時でも歩いて帰れる。ひようらで食事して、まいばすけっとで買い物して、5分で部屋に着く。「大学が生活の中心」にある暮らしです。

デメリットは、慶應の内側にこもりがちになること。街の規模が小さいので、休日に出かける場所は渋谷か横浜まで電車に乗ることになる。

元住吉に住む場合

日吉まで電車1駅(各停で約2分)。通学の負担はほぼない。駅前のブレーメン通り商店街(約250店舗)とオズ通り商店街が生活の軸になり、八百屋・肉屋・総菜店・ドラッグストアが帰り道に全部揃う。自炊派にとっては日吉よりも食材の選択肢が多い。

家賃は日吉とほぼ同水準か若干高め。ファミリー層が多い落ち着いた環境で、ひようらのような学生街の雰囲気はありません。「大学の近くに住みたいけど、慶應の空気から少し離れたい」タイプに向いています。

理工学部の3年以降は矢上キャンパス(日吉駅から元住吉方面に徒歩15分)に通うため、元住吉に住んでいると矢上が近くなる利点もあります。

綱島に住む場合

日吉まで東横線で1駅(約4〜5分)。朝の電車は日吉方面が下り方向のため混雑はゆるやか。家賃は日吉とほぼ同水準ですが、2023年に開業した新綱島駅(東急新横浜線)近接のアピタテラス横浜綱島(大型商業施設)や、綱島駅周辺の食品スーパー・ドラッグストアが揃っており、買い物の利便性は高い。

「ひようら」のような学生街の空気はなく、住宅街としての性格が強い。大学とは切り離された場所で静かに暮らしたい人には合います。

3エリア比較

項目日吉元住吉綱島
日吉キャンパスまで徒歩1〜10分電車2分+徒歩電車5分+徒歩
1K家賃の目安6.5万〜8万円6万〜7.5万円6万〜7.5万円
買い物日吉東急+まいばすけっと2大商店街+ライフアピタテラス+イトーヨーカドー
街の雰囲気学生街+住宅街商店街+住宅街再開発+住宅街
深夜の買い物リコス(24時間)ライフ(23時まで)まいばすけっと(24時まで)

エリア比較の全体像は「慶應義塾大学で一人暮らしするなら?日吉周辺5エリアを比較」で詳しくまとめています。

この街が合う人、合わない人

合う人

通学時間をゼロにして、浮いた時間を勉強やサークルに使いたい人。日吉に住めば、朝の準備に余裕が生まれ、授業終わりにサークルに出て、夜遅くなっても歩いて帰れます。4年間(理工学部なら6年間)の時間の使い方が変わる。

ひようらの飲食店を日常的に使いたい人。キッチンとらひげや武蔵家の味が好きで、サークルの打ち上げも歩いて行ける範囲にある環境は、慶應の学生生活そのもの。

合わない人

おしゃれなカフェや大型商業施設を日常に求める人。日吉はコンパクトな学生街であって、武蔵小杉のグランツリーや渋谷のような商業集積はありません。休日の買い物は電車に乗ることになります。

家賃を月5万円台に抑えたい人。日吉駅徒歩10分以内の1Kで5万円台は厳しい。坂を覚悟して日吉本町方面の徒歩15分圏まで広げるか、白楽・妙蓮寺方面で探す方が現実的です。

終電を気にせず都心で遊びたい人。渋谷からの終電が23:50ごろと、高田馬場の0:20と比べると30分近く早い。深夜のタクシー代も距離がある分高くつきます。

日吉の家賃相場を詳しく知りたい方は「日吉の家賃相場(2026年)慶應生の一人暮らし、間取り別・駅別で比較」を参照してください。日吉周辺の治安情報は「日吉の治安と夜道の安全性」でまとめる予定です。


数値の参照元

  • 治安データ: 神奈川県警察「刑法犯 罪名別 市区町村別 認知件数」(2024年)および港北警察署「犯罪発生状況」(2024年)をもとに編集部が整理
  • 飲食店の価格帯・営業情報: Googleマップ・食べログ・Rettyの掲載情報(2026年4月閲覧)をもとに編集部が整理
  • スーパーの営業時間: 各店舗の公式サイト・Googleマップ掲載情報(2026年4月時点)
  • 銀杏並木: 慶應義塾大学公式サイト「日吉キャンパス 銀杏並木」の情報をもとに編集部が整理
  • 交通所要時間: 東急電鉄公式サイトの路線情報(2026年4月時点)をもとに編集部が算出
  • 終電時刻: 東急電鉄の公式時刻表(2026年3月14日ダイヤ改正後)をもとに編集部が整理。ダイヤ改正により変更の可能性あり
  • 周辺エリアの家賃目安: SUUMO掲載物件(2026年4月調査)をもとに編集部が整理
  • 生活費内訳: 全国大学生活協同組合連合会「学生生活実態調査」(2024年)の平均値を参考に、日吉エリアの家賃水準に合わせて編集部が試算
  • 商店街の店舗数: モトスミ・ブレーメン通り商店街振興組合の公式サイト(2025年2月時点の公表数値)
  • 価格・営業時間は変動することがあります。訪問前に最新情報を確認してください

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